2026年9月03日
こんにちは。昭和区 川名駅から徒歩6分、いりなか駅から徒歩7分、「かわな内科 糖尿病・内視鏡クリニック」です。
前回のコラムでは、病院勤務時代の消化器内科医の過酷な1日についてお話ししました。
今回は、その中でも特に緊張感が走る「夜間の緊急呼び出しから、緊急胃カメラ(内視鏡止血術)を行うまでのリアルな流れ」についてご紹介したいと思います。
深夜の電話からスタートする緊迫の一夜
大きな病院の消化器内科では、救急外来の対応のために科内で毎日1人「緊急対応の待機医師」を当番制で決めています。そのため、待機以外の日に救急外来から呼ばれることはそれほど多くありません。
しかし、消化器内科医の気が完全に休まる日はありません。
なぜなら、自分が主治医として受け持っている入院患者様が夜間に吐血したり、急変されたりした場合は、待機当番でなくても主治医としていつでも呼び出されるからです。「自分の患者さんに何かあったらすぐ駆けつける」というプレッシャーから、自宅にいる夜でも常に気が抜けない毎日を送っていました。
深夜2時や3時。枕元でけたたましくPHSや携帯電話が鳴り響きます。
「救急外来に吐血患者さんが搬送されてきました。バイタル(血圧や脈拍)が不安定で、緊急胃カメラ(内視鏡止血)が必要です!」「入院中の〇〇さんが大量の黒色便をだして、意識状態も悪くなっています!」
夜間救急の担当医師や、夜勤看護師さんからのこういった電話で、一瞬で目が覚め、着替えて即座に病院へと車を走らせます。
病院到着から緊急胃カメラ開始までのタイムリミット
病院に到着すると、休む間もなく一刻を争う準備と対応が始まります。
・患者様の全身状態の確認と全身管理
まず病棟や救急処置室へ駆けつけ、患者様の血圧、脈拍、意識状態、血液検査データを確認します。大量に出血している場合は血圧が急低下してショック状態に陥るため、急速輸液や輸血の準備を並行して行います。
・スタッフの招集と検査室のセッティング
当直看護師や臨床工学技士とともに、速やかに内視鏡室を立ち上げます。処置具(止血クリップや処置用止血鉗子、局注用針など)を不足なく準備します。
・患者様・ご家族への病状説明と検査同意書取得(IC)
意識がある患者様やご同行されたご家族へ、病状の緊急性と内視鏡検査・止血術の必要性、リスクを迅速かつ丁寧に説明し、同意をいただきます。
電話を受けてから胃カメラを開始するまで、わずか30分〜1時間足らず。一刻の猶予も許されない緊張感が現場を包みます。
血海の中での処置:内視鏡的止血術の難しさ
緊急胃カメラは、普段の定期検診で行う胃カメラとは全くの別物です。
カメラを胃の中に入れた瞬間、画面一杯に広がるのは大量の血液や血塊(血の固まり)です。どこから出血しているのか、視界が真っ赤で全く見えないことも珍しくありません。
・視野の確保: カメラの先端から水や空気を送り、吸引を繰り返しながら、血塊の奥にある「出血点(噴出している血管や潰瘍)」を必死に探します。
・止血処置: 出血部位を特定したら、ミリ単位の精度で止血クリップを狙い撃ちして血管を挟み込んだり、高周波で焼灼止血を行います。
胃潰瘍や十二指腸潰瘍からの噴出性出血、あるいは食道・胃静脈瘤の破裂など、一瞬の判断ミスが命取りになる現場で、全神経を集中させて止血を完了させます。
※年に1回あるかないかのケースですが、内視鏡だけではどうしても止血が困難な重症例では、放射線科と連携し血管カテーテル治療(IVR)によって動脈を塞栓して止血を図る必要があります。私が勤めた安城更生病院では、この治療も放射線科ではなく消化器内科医みずからおこなっておりました。
無事に止血が確認でき、患者様のバイタルが安定したときには、東の空が明るくなり始めている……ということも日常茶飯事でした。
基幹病院での修羅場と、当クリニックの役割
こうした夜間の緊急胃カメラや命がけの止血術を何百件と経験してきたからこそ、私は「胃や食道からの出血がいかに恐ろしいか」、そして「いかに早期発見・早期予防が大切か」を身をもって知っています。
・早期サインを見逃さないこと: 胃潰瘍や十二指腸潰瘍ができ始めると、「真っ黒な便(黒色便・タール便)」が出たり、じわじわとした出血による「貧血や立ちくらみ、ふらつき」が現れることがあります。これらの症状は胃腸からのSOSですので、見逃さずに早めに当院へご相談ください。
・胃潰瘍・十二指腸潰瘍の予防: 予防としてのピロリ菌除菌や、定期的な胃カメラ検査を行うことで、大出血を起こす前に未然に防ぐことができます。
・食道静脈瘤破裂の予防と定期チェック: 吐血の中でも特に緊急度が高く命に関わる食道静脈瘤破裂は、主に肝硬変など肝臓の病気が進行している方に起こりやすいのが特徴です。破裂する前の予防や早期発見のため、肝臓が悪い方は年に1回の胃カメラ検査にて、食道や胃に静脈瘤ができていないか定期的に確認することが推奨されています。
当院(昭和区・八事〜御器所エリア)では、高次医療機関の最前線で培った豊富な経験と技術を活かし、患者様が「命に関わる緊急事態」になる前の予防や早期治療に全力を尽くしています。
おわりに
「黒っぽい便が出た」「最近ふらつきや立ちくらみが気になる」「みぞおちが痛む」といった方は、胃からの出血が始まっている可能性があります。決して放置せず、お早めにご相談ください。
また、「健診で肝機能障害(AST・ALT・γ-GTPなどの異常)を指摘された」「脂肪肝や肝硬変など肝臓の状態に不安がある」という方も、当院には日本消化器内視鏡学会 専門医だけでなく日本肝臓学会 専門医も在籍しております。肝臓の状態をしっかり評価しつつ、年に1回の定期的な胃カメラ検査で静脈瘤のチェックまでトータルで予防管理いたします。確かな専門技術で皆様のお身体をお守りいたしますので、どうぞ安心してご相談ください。
■ この記事の監修・文責
院長:安藤 雅能(あんどう まさよし)
所属学会・資格
・日本内科学会 認定内科医
・日本消化器内視鏡学会 消化器内視鏡専門医
・日本消化器病学会 消化器病専門医
・日本肝臓学会 肝臓専門医
・愛知県 難病指定医
■ 当院へのアクセス・ご来院エリアについて
当院は名古屋市昭和区駒方町に位置し、無料の駐車場を多数完備しているため、お車・電車のどちらからでも非常にアクセスしやすい立地にございます。クリニック正面道路を挟んで対側の駐車場をご利用ください。
地下鉄でお越しの方(最寄り駅): 名古屋市営地下鉄 鶴舞線「川名駅」から徒歩6分、「いりなか駅」から徒歩7分の場所にございます。同地域の大病院の勤務医の先生方の負担をすこしでも減らせるよう、今後も務めてまいります。
